ピペッタの論文メモ

論文のメモを書き散らす

4日間、僕は小学校で先生になった。

せんせー、次いつ来るの…?
別れ際の子どもたちの声はどこか寂しそうだった。

大丈夫、またすぐ会える、さ、

自分に言い聞かせるように、僕はそう言った。別れ、それはいつも寂しいものだ。とりわけ今回の別れはそう感じた。やっぱり、おれ、あいつらが好きなんだ。



9/10~13の4日間、僕は小学校で先生になった。田舎の学校だから、全校児童たったの70人。1学年10人ぐらい。1学年がそのまま教室を1つ使っても、かなり余裕があるほどだ。その中で僕は6年生15人を受け持った。
教科はもちろん、理科。分野は水溶液。酸性とかアルカリ性を、リトマス紙を使って調べる実験をした。赤と青の紙の色が変わる、アレ、だ。
はじめに、その授業の内容を聞いたとき、きっといい授業になるだろう、と確信した。感動するに違いないと思ったからだ。当時小6だった僕も、リトマス紙の色が変化した時の感動はあざやかに覚えている。

ガラス棒から落ちるたった一滴の水溶液が、ただの付せんのような紙の色を変えるのだった。もっと色んな液で調べてみたい。ワクワクが止まらなかった。

僕も子どもたちに、同じようなワクワクをプレゼントしたかった。
だからこそ、ひたすら準備に時間をかけた。使える時間は、3週間。3週間で授業の練習を何度も繰り返した。教材づくりにまる3日かけたこともあった。それでも、大切なのは、教材だけじゃない。

話し方、見せ方、視線の配り方、指名の仕方、教師の身振り手振り。気を配ることは山ほどある。たった3週間であらゆる知識をスポンジのように吸収した。
授業を行う前日、時計の針が深夜3時を指すまで、僕は頭の中で授業を繰り返した。

授業はたった45分しかない。しかも一度きり。でも、そこに命をかけた。



だから、きっと、うまくいく。



やはり、期待は裏切らなかった。水溶液がリトマス紙の色を変えるたびに、子ども達の元気な歓声があがった。
授業の始まりから終わりまで、子どもたちの目は輝いていた。
自分自身、満足のいく授業だった。


すべての授業が終わって、学習ノートを集めた。開くと、実験の結果が子どもの個性的な文字で書かれていた。枠をはみ出るようなわんぱくな文字。小ぶりのおとなしい文字。大人顔負けの美しい文字。僕は笑みを浮かべて、赤ペンで丸をつけ、コメントを書き込んでいった。ふと、ノートの端っこに目が留まった。

楽しかったです。

あぁ授業の準備、頑張って本当によかった。同時に先生っていい仕事だ、と感じた。


2週間後、小学校で運動会がある。
必ず行こう。もう一度あいつらに会いに行こう。

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